Valentine Short Stories-ときめきランドのバレンタイン
case1 曜子と力

place:家
time:朝

「さ〜今日もかわいい学生たちと仕事してくるわ。」
身支度を整え、白衣を抱え、ヨーコ犬を抱え(笑)出勤のご様子。
その後ろで所在なさげにリビングに立ちすくむ力。

「なぁに?」
「いや・・その・・・」
曜子の手に握られた不必要に大きな紙袋。
溢れそうになるほど入れられたきれいにラッピングされたハート型。

「じゃ、行ってくるわ。」
「あ・・・ああ・・・」

玄関へと颯爽と歩き出す。
しょぼんとリビングのソファへと歩き出す力。

・・・・・・・・

5分後。

「あ、忘れ物。」
どたばたと走りこんでくる人影に圧倒されながら力は唖然としていた。
「はい。」

どこから出してきたのか、見たことないほど大きな、ピンク色のラッピングされたハート型。
「行ってきます、力。」
にっこり笑顔。

先ほどまでの沈み込みはどこへやら、尻尾を振る犬のように輝かんばかりの笑顔で

「いってらっしゃ〜〜〜い!!!!!!」

うんうんと頷きながら急ぎ足の曜子でありました。



case2 ゆりえと克

place:職場
time:出勤後

「社長、本日の予定ですけど。」
「ええ。」

いつの間にかゆりえの補佐として仕事を覚え始めていた克。
秘書として常にそばに控えるようになっていた。
朝の仕事としてその日一日のスケジュールを確認。

「分かりました。・・」
「はい、車を用意させてあります。」
「では、行きましょう。」

付き添い、後に従う。

玄関で後部座席にゆりえを促すと克は助手席へと乗ろうとする。

「打合せがあるので、横にお願い。」
「・・・はい?」

ばたんとドアを閉め、本日最初の仕事先へと向かう。
「何か?」
仕事中はビジネスを崩そうとしない克にゆりえは外を見ながら。

幸いなことに運転席から後部座席は見えないのだ。

「はい。」
カバンから小さな包みを取り出す。

面食らって、克は目を見張る。

「・・その・・・」
途切れ途切れに言う。

「他のヒトからは・・・もらってない?」
「・・・・・・ああ・・」
「良かった。」
「お前・・・・・」
「一番に、あげたかったから・・・」


化粧をしていても分かるほど目じりを赤く染めながらゆりえはようやく言った。
克は、それを受け取るとそっと耳元で囁いた。

「他なんてだれもくれやしねぇよ。」

ぼそっとつぶやき、そのゆりえの手を強く握った。

その瞬間、車が止まる。
「到着しました。」
運転手の声。

二人顔を見合わせて一瞬笑う。
「さて、仕事だ。」
「ええ。」

今日は始まったばかり。


case3 ココと卓

place:学校
time:昼

「真壁くん、これもらって。」
「卓くん、私のも〜〜!!」
「私も〜〜」

「いや、俺は・・・・」

困ったような顔で卓は受け取りを拒否していた。

「真壁のかわりに俺がもらってやるよ。」
卓の友人たちがこぞって名乗りを上げるものの
「いや〜よ〜。」
群がった女の子たちからは不満声。
そんなこんなしているうちにようやく教室から抜け出す。
「待ってよ〜真壁くん、逃げるなんてずるいわ。」
「約束があるんだよ!!」
そういい捨てて小走りになる。

・・・やっべぇ〜な〜・・・・
予定の時間より少し遅れ気味。

遠めに揺れる髪が見えた。
「卓。」
「わりぃ・・・遅れた。」
「ううん。大丈夫。」
「じゃ行こうか。」
「うん。」
そっと卓に寄り添うようにするココ。

「真壁くん。誰?」
後方から追いかけてきた女の子の声が飛ぶ。
無視するように歩みを速める卓。
友人が
「ああ、真壁の彼女だろ?あれ。」
「へ〜、待ち合わせって・・そっかぁ・・」
「え〜彼女って・・・・」


「お袋、なんだって?」
「うん、卓の誕生日だからっておかず持ってきてくれたの。」
「そっか。」
「でも、でもね・・・・」
ココは卓を見つめる。
「どうした?」
「うん・・・・ケーキは私が作ったの。」
「わかった。ちゃんと喰うよ。」
「チョコケーキ・・大丈夫だよね?」
卓はココの肩を少し抱き寄せる。

「喰うよ、少しくらい失敗してても。」
・・・・・俺のをほかに食われてたまるかよ・・・・

「ひど〜い!!!」

少しふくれた顔をする。
大笑いしながら、卓は家路に急ぐ。
「ほら、帰るぞ。」
「もう!!!」

そういいながら嬉しそうに二人帰っていく姿。
卓を追いかけていた女性たちはそれ以上何も出来なかった・・・・

case4 愛良と新庄

time:放課後
place:花や

「新庄さん、新庄さん。」
「なんだよ、お前か。」
「今日バイト何時まで?」
「いつもどうりに決まっているだろ?」
「そっか・・そうだよね・・・」
手持ち無沙汰に愛良は入り口ふきんで立ち止まる。

「なんだ?」
黙ったまま愛良は新庄を見上げて、かばんをがばっと開けると小さな包みを渡す。

「あげる!!!」
それを押し付けるとばたばたと走り去っていく。
「なんだぁ・・・?・・あいつ。・・あ、そうか。」
見送ると、店の奥へと引っ込む。
そしてがさがさと包みを開けるとそこには不恰好ながらも、それはそれとして美味しそうなチョコ。
小さく笑いながら、一つをぽいっと口に入れる。
「結構いけるな・・・」
そういいながらさてどうするかと思いながら味わっている。

「すみませ〜ん・・」
一瞬むせ返りそうになりながら
「い・・・いらっしゃいませ。」
慌てて店先へと戻っていく。

・・・とりあえず、バイトだバイト。
新庄はそう、思うのであった・・・・


case4(裏) 愛良と開陸

time:帰宅途中
place:道端

「あ・・・愛良。」
「なに?」
「あ〜う〜・・その・・・」
「なによぉ。」
「いや、・・いい。」
「なんだっていうのよ?」
「いいって言ってんだろ!!」
「もう!!!なんなのよいったい!!!!」

珍しく帰宅が一緒になった二人。
(・・・実は開陸が待ち伏せた。w)
結局最後はけんかになって別々に帰ることになってしまった。

・・・・だって・・・
居るなんて思わなかったから、後で持っていくつもりでおうちなんだもん。

家に戻るとすぐに開陸の家のそばまでテレポートする。
「こら!!!愛良!!!!!」

お母さんごめ〜ん・・・今日だけ〜・・・

案の定近くの公園で開陸に追いつく。
「開陸〜〜!!!!」
「あ・・・」

あらためて二人、むきあうと、照れくささが出て言葉が出てこない。
「愛良。」
「開陸。」
ほとんど同時に声がでた。

「お前が先に言えよ。」
「そっちこそ。」
「お前が。」
「開陸が。」

・・・・・・・・・・・・

「はい、これ。」
しばしのち、愛良が耐えかねたように開陸にチョコを差し出す。
「ちゃんと、準備してたんだもん!!!帰りにいるなんて思わなかったし・・・・」
「あ・・・・」

「ありがと・・・・」

真っ赤な夕日の中、結局二人下を向いたまま、じっとしている。
少しずつ、少しずつ、影が近づいていく。

そうして、いつしかふたつの影が重なった。


case5 なるみと鈴世

time:夕方
place:二人の家

「ただいま〜」
「おかえりなさい。」

帰宅した鈴世は大きな紙袋を抱えていた。
「今年もすごいね。パパ。」
「うん、すご〜い。」
「そうだね〜。」
「お返しも大変なんだぞ。」
鈴世は二人の息子にそう言いながらリビングへと入っていく。
「おかえりなさい。」
「ただいま、なるみ。」
リビングには夕食のいい匂いが漂っている。
「美味しそうだね、今日は何?」
「うん、寒いからクリームシチューにしたの、二人とも好きだしね?ね〜?」
「うん、シチュー好き♪」
「僕も〜〜〜」
「食後は?」
「え?」
「ママ絶対手伝わせてくれないんだよ〜。」
「味見はちょっとだけ〜」
「言ったでしょ、まずパパが食べてからよって。」
「パパとママ、ラブラブだね。」
緋生がからかう。
「ほんと、ラブラブ〜〜」
千騎が続ける。
「え・・あ・・・」
真っ赤になるなるみ。
「当たり前だろ、じゃなきゃ緋生も千騎もいないだろう?」
さらっと鈴世は言うとなるみに向き直る。

「今年も楽しみにしてたよ、なるみ。」
「うん、鈴世くん・・今年はホワイトチョコレートケーキだよ。」
「ありがとう、毎年。」

息子二人が後ろを向く。

「あ〜あ・・・・・」

case6 蘭世と俊

time:(もちろん)夜
place:(もちろん)寝室

帰ってきてからの俊は終始不機嫌。
愛良が外出していたのももちろん気に食わないみたいだが。
(とはいえ夕食には帰宅していた)
そういう理由ではないように見えた。

「俊?」
湯上りの蘭世が寝室へと入ってくる。
「・・・・・」
機嫌を伺うようにそれでいて笑みを含みながら。
「今日のジム、もしかしてすごい人だったんじゃないの?」
「お前・・・来たのか?」
少し怒り気味な声。
「行かないわ、そんな・・・・俊に迷惑かかるじゃない。」
「そうか・・・」
「それに午前中はココちゃん来てたしね。」
「ああ、そういえば卓の誕生日だったな。」
「今日呼ぼうかなとも思ったんだけどね、邪魔しちゃいけないでしょ。」
「・・・・そうか・・」
あいつは俺より口はうまいと思うからなぁ・・・・
父親だからこそ、わかる何かもあったりもする。
「ずっと不機嫌だから。ああ、これは練習にならなかったんだろうなぁ・・って。」
「ああ。」
「貴方とても人気あるから・・・・」
「んなこたぁ、ないけどな。」
「でね。」
「?」

蘭世は小さな箱を持っていた。
「私から、よ。」
俊は黙って受け取る。
「カロリーは少なくしてあるの、甘さも抑えているから。」
「さんきゅ。」
ようやく笑顔になる俊。

・・・・・・なんてことはない。
ジムのわずらわしさなんて毎年のことだからなれもする。
ほかの女にきゃーきゃー言われるのも無視すればいいだけのこと。
−だが。

今年に限って朝一番に蘭世からチョコをもらえなかったことが俊の不機嫌の原因だったりもした。
毎年、必ずもらえていたのに、と。
そのイラつきが一日ずっと続いていたに過ぎなかったのだ。

「うん、あのね。チョコレートって寝る前に食べると安眠できるって何かに書いてあったの。だから今年は寝る前に一緒に食べようかなぁ・・って思って。」
「そうか。」
俊は内心わくわくしながら、そんなそぶりを見せずに封を開ける。
「うまそうだな。」
「良かった、喜んでもらえて。」
・・・・お前が作るものなら何でも美味いんだけどな・・・
と心では何でもいえるが、口には出せない俊ではありました。
一つ手に取るとかりっとかじる。
「美味しい?」
「ああ。」
嬉しそうに蘭世は笑った。
「お前も食うか?」
「うん♪」
手を伸ばそうとする蘭世のその手首を掴むと抱き寄せて、チョコを口にしたまま口付ける。

「・・・ん・・・・・んん・・・・」
二人の間をチョコが蕩けあって、つながる。

そして甘さが無くなっても。

俊は片手で包みをベッドサイドに置くとそのまま蘭世を押し倒した。
「もっといるか?」
蘭世の耳元で囁く。
「・・・眠く・・・なってこ・・ない?」
「ならねぇよ。」
「なんでぇ・・・・・・・」
「興奮剤のほうに効いてるんじゃねぇか?」
にやっとして、俊はまだ何か言おうとしている蘭世の唇を再度塞いだ。
「んん・・・・・」

・・・・・・まさにその通り、眠るより先に媚薬として効いてしまったようでありました・・・・・・

番外編

魔界にて
「アロン様。今日は人間界ではバレンタインデーなる日で、女性が男性にチョコレートを送って告白をする日なんですって。」
「へ〜・・」
「はい、これ。ココが送ってくれましたの。お母様からお父様に渡してって。」
「そっか〜面白い週間だな。」
「アロン様?今でも私のこと好きでいらっしゃいますか?」
「もちろんだよ、フィラ。」
「嬉しい・・・」

魔界のトップは今日もラブラブ絶好調。


神谷家では
「卓お兄様〜〜〜!!!!!!!」
と卓のアパートの前で張っていた夢々はラブラブに帰ってくる二人を見せ付けられていつもの勢いも出ず・・・・
風は風で愛良が開陸と帰宅しているのを見て、落ち込み・・・・
家に帰ったら家に帰ったでうれし涙を流しながらチョコを貪っている父親の姿とふんぞり返った母親の姿。

天下泰平な・・・・

それぞれ、な、バレンタインな夜が更けていくのでありました・・・・・・・・。

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